黒髪の野乃

タイトル前の記号は、心への刺さり具合です

△林民夫「糸」を読んで

これ、映画化されたのですね。知らずに読みました。

確かに映画ならさぞかしロマンティックで感動的になるのだろうと思われる内容でした。

 

それぞれの物語

平成に生まれた人々がいかに平成を生きたかを描きます。主人公とヒロインを中心とした人たちそれぞれの視点に語り口があります。

それぞれの人生観があるので、この人はこういう性格や哲学があるのかと興味深く読めました。現実世界において、自分のことばかりで他はおざなりになりがちですが、人は皆それぞれにストーリーがあるということを深々と意識しました。とても基本的なことですが、忘れずに生きていきたいです。

この物語に於いて、それぞれの人のストーリーが糸のように結び合って繋がって世界はできているんだよ、というのが大きな軸なのだと思います。

しかし、個人的には若干それが盛りだくさんで、主人公カップルのストーリーがかすれてしまったのでは、と思います。きっと映画なら、否応なしにカットされて際立つところは際立つのだろうと想像しました。

 

ハッピーエンド

こちらは完全に好みの問題ですが、ハッピーエンドはさほど好きではありません。その理由の一つに、ご都合主義な展開が多いというのがあります。

これが本作には当てはまっていて、ほんのちょっぴり、鼻白みました。

奇想天外な出会いを果たした男女が駆け落ちに失敗し離れ離れ、数年後再会しかし離れ離れ…紆余曲折に紆余曲折を重ね、めでたく…偶然のなすラブストーリーはなんだか苦手です。

しかし、事実は小説よりも奇なり、なんていいます。小説はいくら奇でも構わないし、盛り上がりの代償に、工夫があろうがなかろうが所詮お好みです。