小川洋子「不時着する流星たち」を読んで
つい、装丁に惹かれて手に取りました。
短編それぞれのはじめに挿絵があり、はてこれからどんな物語が開くのだろうと、ときめかせてくれます。西洋の童話のように繊細な絵がとても素敵でした。
現実にはありえなさそうであり得そうでもある話が詰まっています。
例えば、母乳でババロアをつくる話。頑として芯のぶれない女性が潔癖なまでのキッチンでそれを作ります。なにを考えているのか見当もつきません。その映像を思うと、恐ろしくありませんか。
たいていの短編はそのような人の狂気を含んでいて、冷ややかな印象を持ちます。
けれど、ふと、あたたかい話が挿し込まれることもあり、どことなく懐かしさを覚える短編集でした。
お気に入りは以下4つです。
「カタツムリの結婚式」
「肉詰めピーマンとマットレス」
「さあ、いい子だ、おいで」
「十三人きょうだい」
なかに、文鳥の話があります。夏目漱石の小品が思い出されました。文鳥を「淡雪の精」と例えたのが忘れられませんが、本作では「ハッカ飴」と表現されていました。どちらの文鳥も可愛らしいですね。そして、どちらの文鳥も同じ運命をたどるのは、興味深いことです。
わたしの読解力が足りないようで、登場人物の心情や物語の行方はあやふやです。それが残念に思います。